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読み聞かせの効果 ~聞き手編~
体を大きく成長させるには、栄養のある食べ物が必要です。心を成長させるには、さまざまな‘‘体験‘‘と‘‘周りの環境‘‘が大きく関わってきていると言われています。空想と現実の区別がつかない段階のこどもたちにとっての絵本は、‘‘本物の体験‘‘として吸収していきます。その体験を積み重ねることで、心が育ち、後々(思春期~大人)の自己肯定感に繋がっていくと言われています。
年代別の効果と読み聞かせのポイント
0歳~1歳
親子のスキンシップとして、愛情を感じることができ、親子間の信頼関係を築くことができます。また、この頃から絵本を聞く習慣を身につけておくことで、今後の絵本読み聞かせの効果を十分に得られるようになります。赤ちゃん絵本や、音が出る絵本など、脳への刺激になるような絵本がおすすめです。
〈ここを意識して読んでみよう〉
0歳の頃は目があまり見えないので、声で絵本の楽しさを教えます。大げさに感情を込めたり、間を入れたりして表現します。
1歳になると、目で見て楽しめるようになってくるので、上記に加えて食べるふり等の動作も加えてみましょう。
☆声での表現をする上でのコツ
①登場人物の物理的な距離感(遠い、近い)を意識して声のボリュームを 変える。
②動作に合わせた表現をする。(走っている人物→息切れしながら話す、寝起きの人物→眠そうに話す 等)
③違う声の使い分けをする。
声の高さ(高い、低い) × 声の速度(早口、ゆっくり)→組み合わせを変える。
2歳
自分の世界と絵本の世界を重ねて想像する体験ができるようになります。この頃から、心の成長に必要な‘‘体験‘‘を吸収できるようになるので、伝えたいメッセージが詰まった本(教訓や知恵など)を読んであげることで、正しい行動や考え方を理解できるようになります。脳への刺激が中心だった1歳からステップアップし、簡単な物語絵本、知識絵本、仕掛け絵本に興味をもちはじめる時期なので、たくさん読み聞かせをしてあげたい時期ですね。
〈ここを意識して読んでみよう〉
簡単なストーリーを理解できるようになる、‘‘ストーリー移行時期‘‘なので、言葉はゆっくり、絵は長めに、質問もしっかり受け取って(回答はせずに「そう思うんだ。」等、受けとめてあげる)、想像する時間を大切にしてあげてください。
☆絵本の読み聞かせ全体の流れと演じ方のテクニック
①「表紙」 題名、作者をゆっくり話す。
②「表紙をめくった後の見開き」1~2秒で絵本の中に旅立つ準備の時間
③「本題」・1ページ目→ゆったり話す。
・地の文→子どもの方に向かって話す。
・セリフ→絵の方に向かって話す。
・ページを読み終わったら→子ども全体を見わたす。
・ページをめくった後→2秒見せてから読み始める。
・絵だけのページ→5秒みせてからめくる。
・文中の「、」→1秒の間をあける。
・文中の「。」→2秒の間をあける。
・「ところが」「しかし」等の接続詞→3秒の間をあける。
④「裏の見開き(空白)」 1~2秒 余韻に浸る時間
⑤「裏表紙」 物語のその後が描いてあることもあるので忘れずに見せる
⑥「表紙」 おしまい
3~4歳
自分で絵を探したり、感想を言ったり、絵本を楽しむことができるようになってきます。2歳よりも絵本の世界に入り込むことができるので、「このあとどうなるかな」等の想像力を伸ばしていける時期です。2歳の時よりも少し長めの物語絵本等、絵本の種類が増えます。日常生活で不適切な行動を取ってしまった際には、その行動にあったメッセージが込められている絵本を読み聞かせることで、現実に重ねて行動できるようになることも期待できます。叱る回数が減るのは、子どもにとっても大人にとっても良いことですね。
〈ここを意識して読んでみよう〉
絵本では、読み方によって役割が変わります。
・感情を込めて読む → 絵本の個性を楽しむことができる。=感受性を育む
・淡々と事実だけを伝える→絵本に込められたメッセージを伝えることができる。=想像力を育む
小学校中~高学年くらいまでは、想像力を中心に育みたいので、後者の読み方が大切になってきます。もちろん、絵本によって読み方も変わってきますので、子どもの興味関心や反応、絵本の内容とを吟味していろいろな読み方にチャレンジしてみてください。
5歳~小学校3年生
絵本読み聞かせへの盛り上がりが1番見られる時期です。わくわく感を意識しながら、いろいろな本を聞いて想像力(人の気持ちや、心情)を高めたいですね。この頃になると様々な物に興味をもち、(ゲームも然り)、読み聞かせに興味を示さない子どももみられます。強制的に読み聞かせるのはもちろん△。この年代は「大人に注目してほしい」、「大人が注目しているものが気になる」年頃ですので、大人が楽しそうにしたり、興味津々に振る舞ったりして興味をそそるような働きかけをしてみてください。
〈ここを意識して読んでみよう〉
難しい絵本や、長めの絵本にも挑戦できるような段階になってきていて、興味はあるけど、集中力が続かない・・・なんてことも出てくると思います。
そんなときには、「アシスタントパペットくん」を用意します。人形じゃなくても、なにかキャラクター性のあるものを登場させ、読み手が演じます。最初や途中、最後に登場させてあげる等の工夫で、集中力がアップ。これは大人の人にも共感できますね。エンターテイメント性は大切だということですね。
小学校4年生~6年生
この年代になってくると、完全に空想と現実の違いが分かるようになってくるので、残酷な内容でも冷静に聞くことができます。感受性を高めるような読み方で、登場人物とストーリーとで、楽しみ方が大人に近づいてきてるような段階ですね。ただし、大げさな感情抑揚は、幼稚に見えてしまい反感を買うことがあるので注意が必要です。
〈ここを意識して読んでみよう〉
興味関心をひくためにわくわく感が重要になってきます。読みのテクニックも大切ですが、環境調整もポイントの1つになってきます。
人数よりも少し狭い場所に集め、肩と肩が触れそうな距離感で聞くことができる環境を用意します。(マットを敷いて、その上で座って聞く等)すると、集団のなかで気持ちやリアクションが伝播しやすくなります。靴を脱ぐ等、いつもと違う環境を作ることで、聞き手(子ども達)に一体感が生まれ、集中して聞くことができます。
読み聞かせの効果 ~読み手編~
実は読み聞かせは大人にも効果があるのです。以下にまとめてみました。子どもにも大人にもメリットがあるなんて・・・やるしかないですね!ぜひ参考にされてみてください。
- 幸福感が得られる → 読んでいることで、愛情伝達物質オキシトシンが分泌されるようです。
- 脳の前頭前野活性化 → 感情のコントロールが上手くできるようになったり、ぼけ防止にも繋がるようです。
- メタファー(暗示)になる → メッセージ性のある絵本を読み聞かせていると、知らず知らずのうちに自分自身への暗示にもなり、その後の行動変容に繋がっていることがあるそうです。
参考文献:今日から使える 読み聞かせテクニック 著 景山聖子